振動設計で解析シミュレーションを活用するにはシミュレーション精度が重要となりますが、その精度は主として以下3つの要素が実機特性を再現することで向上していきます 。
1) フレーム(部材)の振動特性
2) 重量物のイナーシャ(慣性モーメント)
3) 固定部の取り付け点剛性(局所剛性)
上記3つの要素について、Figure 1.1のようなフレーム構造を例にご紹介します。

1) 部材の振動特性
構造全系の振動特性が実機を再現するには、第一にフレームが部材単位で実機の共振周波数(= 固有振動数 = 固有値)および固有モードを再現している必要があります。実機構造をもとにメッシングする際、細部まで再現するとモデル規模が大きくなって計算時間が増大してしまうため、フィレットやアールなど細部形状を省略することがあります。すると、断面特性が変化して実機の振動特性を再現しなくなっていきます。たとえばFigure 1.2のような単純な直方体のコンクリートブロックは、直方体としてモデル化しただけでは、Figure 1.3のように伝達関数(周波数応答波形)が実測値を再現しません。これは角(カド)のアールが再現されていないことによるものです。 したがって、まずは構造を構成する部材が実測値を再現するようにモデルの誤差を最小化します。具体的には部材単体のハンマリング試験を行って実機の共振周波数および固有モードを計測し、計測されたデータとモデルの計算結果を比較して、必要に応じてモデルを修正してシミュレーション精度を向上させます。このような作業をモデルコリレーションといいます。また、部材の結合剛性が正確にモデル化されていない場合は、部材単体が問題なくとも構造全体の振動特性が再現しないため、部材が結合された状態でもハンマリング試験を行って結合剛性に着目したコリレーションを行います。


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