機械製品が運転状態にあるときの振動を実稼働振動といいます。ここでは、エンジンやモータなどが単体で回転しているときの実稼働振動を解析シミュレーション(FEM)で再現する際の計測におけるポイントについてご紹介します。
起振力の次数成分

実稼働振動の波形は、横軸が周波数、縦軸が振動振幅レベルのグラフです。(Figure 5.1)エンジンやモータなど回転機械が運転状態にあるときの実稼働振動は、回転起振力による振動に加え、部品の振動やノイズなどが混在し、その波形はとても複雑になります。そこで、FEMで再現する際は、計測されたいくつもの振動ピークから再現しようとするピークを選別することが重要になります。起振力により形成される振動ピークは、その次数成分(起振力周波数)の数だけ存在し、回転数の変化に同期して周波数が変化します。これを利用して、回転数を何パターンが変化させながら、起振力の次数成分を明らかにします。
共振点

実稼働振動を計測する際に気を付ける点として、起振力周波数近傍に存在する共振点があります。たとえばFigure 5.2のような三相モータの場合、モータケースには電源ボックスが装着されており、もし起振力周波数に近い共振点を持っていると、その周波数で振動レベルが増大します。この場合、実稼働振動のピークレベルが本来の起振力によるものより大きくなっているため、FEMで再現する際にはそのメカニズムを考慮する必要があります。起振力振動に共振の影響が含まれているか否かをハンマリングにより確認しておくことも実稼働振動計測の大切なポイントとなります。